Mirai Hoshikawa
022025implementation

イベント演出・配信用統合インターフェース

映像・音響・DMX照明・進行をオペレーター1人で統合制御する配信支援システム

個人制作長期インターン
イベント演出・配信用統合インターフェース

課題

ハイブリッド配信の常態化と人手不足で、オペレーター1人が映像・音響・DMX照明・タイマーを同時操作。機材間の切替が頻発し、操作遅延・誤操作の原因に。

アプローチ

これらの演出要素を1台のPCから一括操作できる統合インターフェースをTouchDesignerで個人開発。

成果

6つのピッチ/ビジネスイベントで実運用。従来構成比で操作時間を約6.4秒短縮し、誤操作も減少(日本VR学会大会で発表)。

制作背景

COVID-19を契機に、イベント運営におけるオンライン配信の活用が急速に拡大した。コロナ禍の収束後も、現地会場とオンライン会場を組み合わせたハイブリッド型イベントが一般化しつつあり、今後も継続的な運用が見込まれる。

一方で、ハイブリッド配信の運営には映像のスイッチング、音響・照明の制御、タイマー管理など多様な操作が伴う。急速な市場拡大に技術者の確保が追いつかず、特に中小規模のイベントでは限られた人数で複数の操作を兼任せざるを得ない。本来は別々の担当者が行っていたタスクを1名のオペレーターが同時に処理する状況が生まれ、視線や手の移動を伴う機材間の切り替えが頻発し、操作の遅延や誤操作の原因となっていた。

従来の配信現場では、映像スイッチャー・オーディオミキサー・DMXコントローラー・タイマーコントローラーといった専用機材を個別に並べ、それぞれ別のUIで操作する必要があった。機器ごとに操作系が異なるため、直感的かつ迅速な対応が難しく、複数機材を1人で扱う少人数体制では運用負荷が高い。

そこで本作では、少人数体制での配信オペレーションの効率化と負荷軽減を目的に、映像・音響・照明・タイマー管理を1台のPC上に統合する演出統合インターフェースを企画・開発・運用した。

実イベント会場での配信オペレーション準備
実イベント会場での配信オペレーション準備

システム構成

本システムを用いた機材構成(実設置の外観)
本システムを用いた機材構成(実設置の外観)

本システムはビジュアルプログラミング環境 TouchDesigner で実装し、映像・BGMの再生、照明制御、タイマー管理を1台のPC上で完結させる。音響制御には専用のオーディオミキサーを使わず、映像スイッチャー ATEM Mini Pro に内蔵されたソフトウェアコントロール機能を活用することで、機材点数を抑えた。

複数の専用機器を個別に並べていた従来構成に対し、本システムでは操作系をPC1台に集約。限られたスペースでも展開でき、単独オペレーションでも対応可能な構成とした。スイッチャーやスライドPCなど必要最小限の周辺機器のみを残している。

主な機能 — 4つの操作パレット

統合インターフェースは、映像・タイマー・照明・音響に対応する4つのパレットを1画面上に配置している。機材ごとにUIを切り替える必要がなくなり、視線移動と操作手順の切り替えを最小限に抑えた。

演出統合インターフェースのレイアウト(左上:映像再生/中央上:タイマー/左下:DMX照明/右下:音響)
演出統合インターフェースのレイアウト(左上:映像再生/中央上:タイマー/左下:DMX照明/右下:音響)
  • 映像再生パレット: 任意の動画ファイルを取り込み、指定した外部ディスプレイへ出力する。PCに接続された外部ディスプレイの識別番号とパレット上のディスプレイポート番号を一致させることで、目的の画面へ全画面出力できる。
  • タイムマネジメントパレット: 現在時刻の表示に加え、任意の長さに設定できるカウントダウンタイマーを実装。残り時間に応じてベル音を再生するタイミングを設定でき、登壇者の持ち時間管理を補助する。司会者用デバイスとして切り出し、遠隔操作でイベント進行を補助する活用も可能。
  • DMX制御パレット: DMX対応照明機材をRGBまたはHSVで発色制御する。プリセット機能で、あらかじめ設定したシーンに応じた色変化を即座に呼び出せる。映像再生やタイマーと同一システム上で動作するため、映像内の色変化やタイマー残り時間に同期した照明制御も可能。
  • サウンド制御パレット: BGMを最大8種類まで読み込み可能。音源ごとに音量を設定でき、会場の音響特性に合わせた全体音量調整も行える。突然の再生・停止が不自然にならないよう、数値指定可能なフェードを設けた。

運用実績

本システムは、2025年を通じて6つのピッチ/ビジネスイベントで実運用した。ピッチイベントは映像演出・BGM・照明・登壇者の持ち時間管理が密接に連動する現場であり、統合制御の効果が現れやすい。

実イベントでの稼働中の様子(1台のPCに操作系を集約)
実イベントでの稼働中の様子(1台のPCに操作系を集約)
ピッチイベント会場のステージ演出
ピッチイベント会場のステージ演出

ROCKET PITCH NIGHT、Hello, Business Summit、NEP-Lab など、規模・会場特性の異なる複数のイベントで継続的に運用し、現場でのフィードバックを機能改善に反映した。机上の1台で映像・音響・照明・進行を扱えるため、限られたスペースと人員でも安定した配信オペレーションを実現している。

評価

本システムの有効性を検証するため、実イベント配信で頻繁に発生する一連の操作をモデル化した**操作シナリオ(全10ステップ)**を用い、従来のシステム構成と本システムを導入した構成の操作効率を比較する操作試験を実施した。各構成で10回ずつ試行し、操作時間と誤操作回数を計測。映像再生・カウントダウン中の待機時間(計42秒)を差し引いた値を実操作時間とした。

本システムを使用した場合、操作時間の平均値は従来構成と比較して約 6.4 秒短縮された。対応のある t 検定の結果 p = 9.43 × 10⁻⁵(p < 0.05)となり、統計的に有意な短縮を確認した。

また、10回の試行で発生した誤操作回数も従来構成の6回から2回へと減少した。機材ごとにUIを切り替える必要がなくなり、視線移動・操作手順の切り替えが最小限に抑えられたことが、操作時間の短縮と誤操作の減少に寄与したと考えられる。

操作時間の比較(左:従来構成/右:本システム)
操作時間の比較(左:従来構成/右:本システム)

本システム使用時にも、マウスによるカーソル移動時の操作ミスが一部残っており、機能ごとの操作頻度に応じたボタン配置・サイズの最適化が今後の課題である。また、本評価は単一の操作シナリオに基づくため、認知的負荷・操作者の習熟度・演出の複雑性といった要因を含めた多様なシナリオ・複数オペレーターでの評価が今後の展開となる。

01

制作体制

配信システム:個人制作(企画・開発・運用) 配信オペレーション:チームで実施

02

導入・展示実績

  • ROCKET PITCH NIGHT IBARAKI 2025 で運用 (2025/1)
  • Business Challenge Program 最終発表会 で運用 (2025/1)
  • NEP事業ピッチイベント「NEP-Lab(ねぷらぼ)2025」で運用 (2025/3)
  • Hello, Business Summit「ハロビジ2025 Spring」で運用 (2025/4)
  • ROCKET PITCH NIGHT 2025 ULTIMATE で運用 (2025/5)
  • Hello, Business Summit「ハロビジ2025 Autumn」で運用 (2025/10)
  • 第30回 日本バーチャルリアリティ学会大会 で開発と評価を発表 (2025/9)
03

書誌情報

  1. 干川未来, 上原皓, "少人数体制での配信操作を支援する演出統合インターフェースの開発と評価", 第30回 日本バーチャルリアリティ学会大会, 2025年9月. [link]
04

使用ツール

PythonTouchDesignerDMX照明ATEM Mini Pro