Mirai Hoshikawa
082026entertainment

Relational Coral

触れずに、ゆっくり、群れていく

個人制作最優秀賞
Relational Coral

着想

珊瑚の共生と白化を手がかりに、人と人の関わり方を静かに問えないか。

アプローチ

5体の半透明な珊瑚オブジェによる群体インタラクション。近づけると発色、触れる/孤立で白化し、変化が数十秒かけて波のように隣へ伝播する。

成果

「触れず・急がず・そばに置く」と色が保たれるルールを、観客がゲームのように発見する作品。アート&テクノロジー東北 2026 で最優秀賞を受賞(インタラクティブ作品部門)。

作品概要

珊瑚は、触れられることを嫌う生き物である。実際にコーラルキーパー(珊瑚飼育者)は、珊瑚をケアするためにできるだけ触れないことを選ぶ。 そして珊瑚の白化現象は単に色が抜ける物理現象ではなく、共生する褐虫藻が離れる現象——つまり関係性の不在によって色が失われることを意味する。色は、関係性の中でしか立ち上がらない。

本作はこの生物学的事実を根に置き、共生と白化を群体スケールのインタラクションへ翻訳した。私たち人間もまた、関わり合いのなかでしか自分の色を保てないのではないか——白化を通して、人と人の関わり方を静かに問いかける。

群体を形成したときの発色状態
群体を形成したときの発色状態

体験のしくみ

5体の半透明な珊瑚オブジェの群体で、観客の関わり方によって発色・白化が変化する。

  • 触れる・持ち上げる → 白化する
  • 近づける → 色を取り戻す
  • 群にして待つ → ゆっくり伝播する

各個体の色は、近くにいる仲間の度合いの総和で決まる(空間積分)。さらに「持ち上げ」などの状態変化は、即時応答ではなく数十秒かけて波として隣の個体へ伝播する時間遅延伝播)。自然がゆっくり応えるような時間スケールで、介入と群の変化が生まれる。

観客は、触れず・急がず・そばに置くことが色を保つと、ゲームのように発見していく。 過剰な干渉(触れる・持ち上げる)や、つながりの欠如(孤立)は白化を招く。

通知社会が私たちに常時の反応を求めるなかで、「即時に応答しないケア」「ゆっくり群で関わる共生」のあり方を、珊瑚礁を通して体感させる。

インタラクション:触れると白化する
インタラクション:触れると白化する

システム構成

TouchDesigner による水面映像の生成(群泳する熱帯魚)
TouchDesigner による水面映像の生成(群泳する熱帯魚)

各個体には M5Stack CoreS3 を内蔵し、個体間は ESP-NOW によるブロードキャスト通信で連携する。

  • 近接の度合いは RSSI(電波強度)から擬似的な距離として取得
  • 持ち上げは内蔵 IMU(加速度・ジャイロ・傾きの融合)で検出
  • 発色は CoreS3 画面と NeoPixel Ring
  • テーブル面には TouchDesigner で生成した水面映像を投影

論理は PC 上の Python シミュレータで先行検証し、空間積分と時間遅延伝播の複合をオブジェ実機へ実装した。

MR による拡張

物理の珊瑚に加えて、パススルー MR(Meta Quest 3)による拡張レイヤーを重ねている。ヘッドセット越しに覗くと、珊瑚が群れて発色したときに、珊瑚礁を棲家とする魚が空間へ集まってくる——実物どうしの関わりが、その場の生き物の気配として立ち上がる。

展示・受賞

アート&テクノロジー東北 2026 にインタラクティブ作品として出展し、最優秀賞(MOST EXCELLENT PRIZE) を受賞した。

アート&テクノロジー東北 2026 での展示。来場者に体験を案内した
アート&テクノロジー東北 2026 での展示。来場者に体験を案内した
最優秀賞(MOST EXCELLENT PRIZE)を受賞
最優秀賞(MOST EXCELLENT PRIZE)を受賞
水面を投影したテーブル上に群体として配置
水面を投影したテーブル上に群体として配置
孤立・接触により白化した状態
孤立・接触により白化した状態
作品パネル(Relational Coral)
作品パネル(Relational Coral)
01

制作体制

個人制作

02

導入・展示実績

  • アート&テクノロジー東北 2026 最優秀賞 受賞(インタラクティブ作品部門)
03

使用ツール

M5Stack CoreS3ESP-NOWArduinoTouchDesignerPythonNeoPixel3DプリントMeta Quest 3