Relational Coral
触れずに、ゆっくり、群れていく

着想
珊瑚の共生と白化を手がかりに、人と人の関わり方を静かに問えないか。
アプローチ
5体の半透明な珊瑚オブジェによる群体インタラクション。近づけると発色、触れる/孤立で白化し、変化が数十秒かけて波のように隣へ伝播する。
成果
「触れず・急がず・そばに置く」と色が保たれるルールを、観客がゲームのように発見する作品。アート&テクノロジー東北 2026 で最優秀賞を受賞(インタラクティブ作品部門)。
作品概要
珊瑚は、触れられることを嫌う生き物である。実際にコーラルキーパー(珊瑚飼育者)は、珊瑚をケアするためにできるだけ触れないことを選ぶ。 そして珊瑚の白化現象は単に色が抜ける物理現象ではなく、共生する褐虫藻が離れる現象——つまり関係性の不在によって色が失われることを意味する。色は、関係性の中でしか立ち上がらない。
本作はこの生物学的事実を根に置き、共生と白化を群体スケールのインタラクションへ翻訳した。私たち人間もまた、関わり合いのなかでしか自分の色を保てないのではないか——白化を通して、人と人の関わり方を静かに問いかける。

体験のしくみ
5体の半透明な珊瑚オブジェの群体で、観客の関わり方によって発色・白化が変化する。
- 触れる・持ち上げる → 白化する
- 近づける → 色を取り戻す
- 群にして待つ → ゆっくり伝播する
各個体の色は、近くにいる仲間の度合いの総和で決まる(空間積分)。さらに「持ち上げ」などの状態変化は、即時応答ではなく数十秒かけて波として隣の個体へ伝播する(時間遅延伝播)。自然がゆっくり応えるような時間スケールで、介入と群の変化が生まれる。
観客は、触れず・急がず・そばに置くことが色を保つと、ゲームのように発見していく。 過剰な干渉(触れる・持ち上げる)や、つながりの欠如(孤立)は白化を招く。
通知社会が私たちに常時の反応を求めるなかで、「即時に応答しないケア」「ゆっくり群で関わる共生」のあり方を、珊瑚礁を通して体感させる。

システム構成

各個体には M5Stack CoreS3 を内蔵し、個体間は ESP-NOW によるブロードキャスト通信で連携する。
- 近接の度合いは RSSI(電波強度)から擬似的な距離として取得
- 持ち上げは内蔵 IMU(加速度・ジャイロ・傾きの融合)で検出
- 発色は CoreS3 画面と NeoPixel Ring
- テーブル面には TouchDesigner で生成した水面映像を投影
論理は PC 上の Python シミュレータで先行検証し、空間積分と時間遅延伝播の複合をオブジェ実機へ実装した。
MR による拡張
物理の珊瑚に加えて、パススルー MR(Meta Quest 3)による拡張レイヤーを重ねている。ヘッドセット越しに覗くと、珊瑚が群れて発色したときに、珊瑚礁を棲家とする魚が空間へ集まってくる——実物どうしの関わりが、その場の生き物の気配として立ち上がる。
展示・受賞
アート&テクノロジー東北 2026 にインタラクティブ作品として出展し、最優秀賞(MOST EXCELLENT PRIZE) を受賞した。





制作体制
個人制作
導入・展示実績
- — アート&テクノロジー東北 2026 最優秀賞 受賞(インタラクティブ作品部門)